

「なにあれ?」「すげぇ〜」「え?いま作ってるの?」誰もが足早に通り過ぎる新宿の地下道で、道行く人が次々に足を止める。視線の先には、壁に向かって作業をする複数の男女。人々は興味津々で近づき、話しかける人もいる。東京メトロ丸ノ内線・新宿駅コンコースの壁に突如登場した巨大な物体―正体は、のりがつきにくいハサミ『エアロフィット』のプロモーション―東京藝大生が『エアロフィット』を使ってガムテープを切り貼りし、8日間でアートを完成させるというキャンペーンだ。
真っ黒な2m×8.7mの壁面で徐々に全貌を現すアートの「現場」。学生が舞台裏を語るYouTubeの「動画」。目にした人の気持ちが飛び交う「Twitter」。そしてすべてを束ねる「ウェブサイト」。交通広告が他メディアへの導線を担う手法とは180度異なり、制作現場=広告現場そのものがコンテンツであり、基点となっていた。
告知と同時にキャンペーンサイトとTwitterを開始。サイトではスタッフのブログレポートのほか、日々の現場写真と学生のコメントによる動画を1日1本公開。Twitterでのつぶやきや学生への応援メッセージもリアルタイムで表示した。アート完成後にはガムテープの使用量をクイズにしたキャンペーンも展開。タッチポイントがどこであろうと、現場の鮮度を逃がさず届けるしくみが徹底されていた。
最大の鍵は、「のりがつきにくい」というハサミでガムテープを2週間切り続ける「実証広告」を「アート制作」に置き換え、その過程のすべてを“ライブ”で見せたこと。先日注目されたiPhoneケース貼り付け広告は持ち帰られる様子がネット中継されて話題になった。今回の場合は話題性に加え、時間が経つにつれて商品特長の実証力が強まる上に、アート完成への人々の関心も高まる「成長する広告」。1日平均乗降人員約24万人の東京メトロ新宿駅コンコースで「広告」を「現場」に変えた“ライブ感”の引力は、人の目を留め、足を止めさせるこれからの交通広告のヒントになる予感がした。
