Interview

茂木健一郎「どれほど多くのことで楽しむことができるか。それが成熟の表れだと思う」

「感情というのは、人生とは何が起きるかわからないという不確実性に脳が適応するために進化してきたといわれているんです。人間は動物の中で最も知能が高い生き物ですが、同時に感情が最も豊かな動物でもある。
サッカーの試合を観て盛り上がったり、悲しくて泣くのは人間だけ。人間の脳を理解するには、感情を知ることが大事になってくるんです。同じ物語を読むのにも、笑うような表情で読むのと、つまらなそうな表情で読むのとでは、楽しさが違うという有名な実験があるんです。
つまり、顔の筋肉と脳が結びついていて、顔の表情が脳にフィードバックされる。米国では眼が合うとにっこり笑いますよね。
例えあれが作り笑いでも、あの習慣と米国の楽観性とには関係があると思うんです。感情って案外、体と深く結びついている。体調がすぐれないと気分も感情も荒れてきますよね。豊かな感情の基本は、健やかな身体。だから健康は大事なんです」

―では努めて笑うことは、今の暗い時代を乗り切る鍵なんですね。
「そう。第一、安上がり(笑)。脳を健康にするには、面倒くさがらず自発的に自分の体を使うのが何よりもいいんですよ。脳にも生活習慣病があるんです。どう使うかで、10年、20年後には全然違う脳になる。危ないのは、中高年になって偉くなって、送り迎えの車が来て、秘書が何でもやってくれるような人。自ら脳の成人病になる道を選んでいるようなものです。だから、僕も全部自分でやるんです。秘書もマネージャーもいませんよ」