Interview

倉本聰「人を描くのがドラマ。人間がどういうものか知らずに、物語は描けない。」

―人間に対して興味を持つというのは、何をする上でも社会で生きていくための原点ですよね。
「芝居の世界では、開放、集中、想像が必要とされます。まず最初にリラックスしないといけない。でも、我々は初めて会った人とはなかなかそうなれない。酒なんか飲むと一気にリラックスできますよね。あれは何なんだと思うんですよね(笑) あと、挨拶から始まるマナーというものも必要です。ところが、一期のときに一番苦労したのはこれです。ライターにしても、役者にしても、人と接して受け入れてもらう商売だから、営業が必要になってくるんですよ。そうすると、きちんとした言葉、丁寧なおじぎ、そのくらいはできないと人間として損するからとしきりと言うんですが、照れるのか何なのか知らないけれど、やらないんですよ。3カ月目ぐらいで、マナーに関してはもう無理かと思ったんですね。で、ある日、雑談で高倉健さんの話をしたんですよ。健さんは礼儀作法のぴしっとした方で、目上の人だけでなく、目下の人にもきちんとしたお辞儀をする。メリハリが全然違うという話をしたら、翌日から全員健さんですよ(笑)。何で僕が言っても聞かないのに、高倉健だと言うことを聞くんだって、ちょっとショックを受けました(笑)。その後、健さんが遊びに来てくれて、本物を目の当たりにしてからは、良くわかったようです。健さんは生きたお作法の先生ですね」