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メトロで行く文化の薫りと下町の匂い 『荻窪』

荻窪一帯は武蔵野の草深い田舎だった。井伏鱒二の『荻窪風土記』によると、大震災前は、品川の岸壁を離れる船の汽笛がボオーッと聞こえたらしい。
大正から昭和初期にかけては近郊の別荘地。軍人や政治家などが邸宅を構え、二・二六事件で襲撃された渡辺邸、戦犯となって自殺した近衛文麿の荻外荘も荻窪にあった。
荻窪に住んだのは、作家として出発する頃の太宰治もその一人。戦前から作家、画家、音楽家が多く住み、別荘地由来の"お屋敷町"と相まって文化的な土壌を育んでいく。
その一方で、下町色も濃い。震災や戦災を逃れ、下町の職人たちも移り住んだ。路地に軒を連ねる商店街は、昭和の匂いがする。戦後まもない闇市で商売を始めた惣菜店が、今も繁盛している。