Interview
俳優 堤 真一 「さまざまな役を演じるためには、私生活の充実が大事」
―演じるということは、人生の素敵な部分だけを表現することではありません。本作で登場した生瀬勝久さん演じる"誰からも嫌われそうな医師"のように、ときには悪も表現しなくてはならない。辛いときもあるのでは?
「僕自身、子供の頃は悪役ばかりやっている俳優さんを、"この人は悪い人だ"と思いこんでいました(笑)。それほどまでに、俳優は役柄と重ねられる。でも、どんな役でもそうですが、作品の一部で、ひとつの役割を担っているだけ。だから、好ましくない役を演じるときは特に、自分とは切り離して考える。それが作品に必要なんだと考えるんです。そして、演じる上で楽しむ。悪役を演じる際は、自分でもいじわるなことを考えてみたり。そうすれば、悪役はより悪く見えますよね。今回のように、生瀬さんが悪く見えれば見えるほど、僕は普通にしていてもいい人に見える。特に今回の役は主張せずに正義を貫きますから、問題を際立たせるためには、やはり生瀬さんが鍵になる。主役だろうが、脇役だろうが、いい作品にしようと思ってやっているし、そうなれば嬉しいんです。そこが、どんな役でも楽しむための唯一の拠り所かな」
―役から役への切り替えはどのようにするのですか?
「実は、役作りは一瞬でできるんです。もちろん稽古で積み上げてきたものがあるからなんですが、要はお客さんに見える場所に来た瞬間に役になりきればいいんです。だから、私生活に役は持ち込みません。それをやったら、人生がダメになりますから(笑)。もちろん役から教わることも多いんですが、すべての役が自分を通して現実のものになっていくので、自分に幅がなければ奥行きをもって演技できないんです。役に自分を左右されてばかりいたら、次の役にも進めないし。まずは、自分の私生活を充実させることが大事だと思っています」
―自分をしっかり持つというのが、役を演じ分けるコツですか。
「でも、そう思っていてもどうしても引きずるものですからね。本作のように医者の役をやっているときは、家でTVを観て、ビールを飲んでいるのに、手術キットを持ってきて手許で縫合の練習をしていたり。そのうち、TVそっちのけで懸命にやっていたりするんですよ(笑)。で、最後にはTVも消して。演じ終わると見事に全て忘れますけれど」