地域密着型商業施設と地域コミュニティ形成におけるプロモーションについて

 新型コロナウイルスの影響で、遠出をするには、まだ少し躊躇してしまう日々が続いています。しかし、行き慣れた近場であっても、「生活必需品を買いに行くだけのお出かけ」が「楽しむためのお出かけ」になったとき、その場所に対し、新たなる「親しみや愛着」の念が湧くのではないでしょうか。
 本コラムでは、プロモーション部が販促活動に加え取り組んでいる、地域密着型商業施設における“地域貢献”の事例をご紹介します。

商業施設が地域住民のハブに

 その商業施設では通常の販促活動とは別に、「地域住民の方のハブとなりコニュニティの輪を広げる」ことを目的とした活動を行っており、弊社では実施から運営・管理までをサポートしております。その活動は「部活動」。例えば、「ダンス部」「ファーム部」「お茶部」といった活動を、テナントも絡めたうえ行っています。もちろん「部員」は地域住民の方々。施設側は、活動場所・活動費用・講師を用意し、月一度と定期的に開催しています。
 創部にあたっては、いくつかある部活の候補から住民の方々にWEB投票を行っていただき採択。なかには、定員をはるかに超える応募数があった部もありました。入部した部員の方に応募理由を聞いてみると、「コロナ禍で外出もできないけれど、身近な場所で仕事以外の仲間が欲しい」、「夫婦で趣味を作りたい」、「子どもの食育のために参加した」といった回答が数多く見受けられました。また、定期的に行っているアンケート調査でも、概ね高評価のコメントを頂いています。
 コロナの影響で、一堂に会しての活動ができない月は、オンライン上での活動を継続していました。部員のモチベーション維持のためには、開催し続けることが重要です。また企業としては、「臨機応変な対応をしてくれる施設」というイメージを持っていただくことも大切です。オンラインという手法だけでなく、企業としての行動姿勢でも、時代に対応するコミュニケーションにチャレンジしています。

地域密着型施設の目指すべき姿とは

 主要都市にある商業施設は、日々、様々なエリアから、様々な方々が来館するため、ターゲットを幅広く想定する必要があります。他方、地域密着型商業施設のメインターゲットはまさに地域の方々。来館者数は限られており、再来館こそが経営の肝となるので、「広く愛される」というより、「深く愛される」ことが重要です。そのために、ピンポイントでの施策を展開することが大切だと思います。例えば、地域住民から好まれる傾向にあるイベントやワークショップを定期開催するなど、「あそこに行けば必要なものが揃うだけでなく、何か楽しいことが行われている」といったイメージを持ってもらうこと。事実、日本ショッピングセンター協会が作成・公表している『ショッピングセンターの地域貢献ガイドライン』によると、地域における商業施設は、まちづくりに対し、積極的に参画し重要な枠割を担うことを期待されています。したがって、先の「部活」という取り組みも、単なる来場誘引施策ではなく、地域の活性化や賑わいを目的とする“地域貢献”のひとつなのです。

販促以外に、広告代理店が貢献できること

 地域における商業施設にとって、日々、お客様にご利用いただくことは当然 重要であり、通常の販促活動は必要不可欠です。同時に地域生活者の強い支持も、存続していく上では必要不可欠です。したがって、世代を超え愛され続ける根強いファンを作る取り組みをすることも、結果として来館回数を増やすことにつながります。今回採り上げた施策は一例ではありますが、今日明日のための短期的な販売施策だけでなく、長期的視点に立ったコミュニケーション設計も、私たち広告代理店に望まれていることと感じています。

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