交通広告をどう測るか。「渋谷事変」にみるリアルの価値。

大手外資系企業のお客様に「屋外広告は、質的な効果があるので実施している」と言われたことがあります。その広告主は“超”データ重視のマーケティングで有名なのですが、屋外広告予算は決して少なくなく、上記についてはお世辞で言われたのではないことがわかります。
 
このコラムでは東京メトロメディアのマーケティング担当として、効果測定の実態等を通じて交通広告の可能性についてお話できればと思います。

渋谷プレミアムセット
渋谷プレミアムセット

 

見えづらい広告効果

屋外広告をはじめとした交通広告はweb広告に比べて効果の計測が難しいと言われます。私も営業に伺い、お客様に対して明確な数値で報告ができずに歯がゆい思いをしたことがありました。
一般的に屋外広告をはじめとした交通広告といったリアルな環境にある広告は、手計測やアンケート調査などを実施します。こういった調査は、確かなレポートが手に入る反面、その分調査自体に非常に多くの工数が生じる為コストがかかり、多用できません。

テクノロジーによって少しずつ解明

コロナ禍で混雑度合いが注目された影響もあり多くの流動調査ツールが出てきました。主流なツールを3つほどあげると、①カメラ等の映像分析、②センサー(Wi-Fiなど)③GPS、携帯キャリアのデータがあります。①はソフトウェアが人流を判別しカウントしますが、②、③ではモバイル端末(スマホなど)を捕捉し、流動数や属性などを推計しています。
媒体単位での調査を実施するには①、②といったカメラやWi-Fiなどの機器を現地に設置する必要があり、その分コストがかかります。③については測位技術の問題で最低5m~10mの誤差がでてくるため、何らかの統計処理が必要となってきます。
このように調査ツールにも得手不得手があるものの、内部データや外部データを活用することで着実に広告効果の見える化は進んできています。

質的な広告効果

冒頭にも触れた交通広告の良さは質的な効果にもあると思います。質的というと広告を目にした方の感想やその印象の深さなどを指し、主にアンケート調査やソーシャルリスニング(SNSの分析など)で調査されます。実際にSNSと屋外広告の相性は良く、この部分が気になる方は下記コラムにて事例を扱っています(※1)。交通広告のメディア特性は、商圏のターゲットにリーチできることに加えて、現実空間(リアル)にコンテンツを展開できることにあるのではないでしょうか。

※1 参考:SNSでの話題化を見据えたOOHプランニングのすすめ)

渋谷プレミアムセットの「事変」にみるリアルの魅力

今年3月に「呪術廻戦」(集英社,芥見下々)の広告が東京メトロ渋谷駅にてに実施されました(※2)。公式Twitterアカウントにおける脅威の7.3万いいねもさることながら、その多くの感想がポジティブであり、この展開により、作品への好意が増したということがうかがえます。作品の舞台となった渋谷にて広告を展開することで、より作品が身近に感じられます。公共空間なので、一部展開を制限させていただくこともありますが、こういったコンテンツの展開は交通広告特有の価値なのではないでしょうか。

また、駅構内という公共空間であるため、商品に信頼感を持たせることができます。
公共空間ゆえに展開が制限されてしまうこともありますが、駅ばりポスターや駅看板などの従来のメディアもブランディングには大きな効果があります(※3)。

※2 参考:「呪術廻戦 公式Twitter」,(2022/1/19)(別窓で開く)

※3 参考:「ブランドコミュニケーションに効果あり!駅看板多面展開の広告効果レポート」

オンラインとオフライン、2者択一ではない

交通広告といったリアルなメディアは、デジタルテクノロジーによってその価値を増していくと考えられます。今はデジタルテクノロジーにより現実の広告機能を「拡張」していく段階かと思いますが、ゆくゆくは現実においても弊害なく広告価値を測れるようになります。オンラインメディアorオフラインメディアと、二者択一で語られることはなくなり、価値は統合されていくと予想します。
意外かもしれませんが、屋外広告、交通広告に代表されるOOHメディアはコロナを経て、雑誌、新聞などと比較して、5.3%(2020年)から5.6%(2022年予測)とシェアを伸ばすと言われています(※4)。

※4 参考:電通グループ,「世界の広告費成長予測 2020〜2022」,(2022/1/19)(別窓で開く)

今回、交通広告の可能性についてお伝えしましたが、実際のところ、交通広告はまだその価値を測りづらい現状は変わりません。その価値を明らかにし、メトロメディアのマーケティング担当として、交通広告の価値をお客様に対して明確にお伝えできるよう取り組んで参ります。

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